腎臓「働き」いろいろを知ろう

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

ホルモンをつくるホルモンをつくる

血圧を調整するホルモン

腎臓は、私たちが生命と健康を維持するための様々なホルモンもつくっています。

腎臓でつくられるホルモンにより、私たちの体は健康な状態に保つことができています。

1つ目は、血圧を調整する「レニン」というホルモンです。

糸球体の血圧は、血液をろ過するために一定に保たれています。

血圧が低下すると、ろ過の働きが悪くなってしまいます。

これを避けるため、血圧が下がると、腎臓は血液を供給する血管の「輸入細動脈」(ゆにゅうさいどうみゃく)でレニンをつくりだします。

このレニンは血管を収縮させる作用をもつ「アンジオテンシンII」というホルモンに働きかけ、血圧を上昇させます。

これによって、腎臓は血圧を一定に保っているのです。

血液をつくるホルモン

2つ目は、「エリスロポエチン」と呼ばれる血液(赤血球)をつくるホルモンです。

日々大量の血液が送り込まれる腎臓には、血液中の酸素の状態を感知するセンサーがあります。

このセンサーが『酸素が足りない』と感じると、酸素を運ぶ血液を増やすために、尿細管周囲からエリスロポエチンをつくりだします。

エリスロポエチンは、骨の中にある「骨髄」(こつずい)と呼ばれる血液を製造する組織に作用して、血液をつくる指示をします。

腎臓の機能が悪くなると、腎臓からつくられるエリスロポエチンの量が減少するため、十分な量の血液がつくられなくなり、貧血を起こしやすくなるといわれています。

骨を丈夫にするホルモン

3つ目は、骨を丈夫にする「活性型ビタミンD」というホルモンです。

ビタミンDは食品に含まれる栄養素ですが、そのままの形で働くことはできません。

肝臓と、腎臓の尿細管で酵素(※1)の働きを受け、活性型ビタミンDに変化します。

活性型ビタミンDは腸からのカルシウム吸収を促し、骨を丈夫にする働きがあります。

このようにして、腎臓でつくられるホルモンにより、私たちの体は健康な状態に保つことができています。

※1 酵素:体内で化学変化を起こす蛋白質

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。