生活習慣病と慢性腎臓病(CKD)の関係

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

高血圧と慢性腎臓病高血圧と慢性腎臓病

「高血圧」と慢性腎臓病の関係

慢性腎臓病(Chronic Kidney Disease:CKD)は、腎機能が正常の60%以下に低下しているか、たんぱく尿が出るなどの腎障害が3ヵ月以上持続した状態をいいます。

このCKDの発症と進行には、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病が強く関与するといわれています。

生活習慣病の中でも、特に高血圧は腎臓と深い関係があります。

腎臓は、血液をろ過して、体内の老廃物や余分な水分を排出するという働きをしていますが、このろ過機能を円滑に行うために、全身の血圧を一定に保っています。

このように腎臓は体内で血圧を調節する役割を担っているため、高血圧の合併症を持っていると、腎臓の働きが低下し、CKDの原因になりやすくなります。

これは高血圧の状態が長く続くと腎臓の血管に負担がかかり、動脈硬化が起こります。それにより血管が狭くなることで、腎臓に流れる血液量が減り、機能も悪化します。すると水分を尿として十分に排出できなくなるため、血液量が増加します。結果、心臓の負担は増え、血圧も高くなるためです。

腎機能低下が高血圧を引き起こす

一方、CKDなどの要因により、腎機能が低下すると、余分な水分や塩分を適切に排泄することができなくなり、体液量が増加します。その結果、高血圧が引き起こされます。

CKDの1つと考えられているADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)においても、高血圧は50〜80%という高い頻度で発現します。通常の高血圧よりも、若年層での発症が多いのが特徴で、ADPKD/多発性嚢胞腎による高血圧は、腎機能が低下するより以前から認められます(※)。

原因はさまざまありますが、高血圧はCKDの原因となり、既存のCKDを悪化させます。また逆に、CKDは高血圧の原因となり、既存の高血圧を悪化させます。

このように、高血圧とCKDは悪循環の関係をつくっているのです(図)。

  • 監修/成田一衛. エビデンスに基づく多発性嚢胞腎PKD診療ガイドライン2020. 東京医学社;2020. p37.

血圧コントロールが腎臓の働きを守る

したがって腎臓を守るには、この悪循環を断ち切る必要があります。

そのためには血圧を下げる薬物治療や、食事療法を行います。特に降圧には、減塩が重要です。また同時に、尿たんぱくを減らすための治療も行います。

CKD患者さんが血圧をコントロールすることは、腎臓の働きを守ることにつながります。それによって、心不全や急性肺塞栓症などの心臓・血管の病気の発症や、死亡のリスクを下げることができます。

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。