「尿」で知る腎臓の病気

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

尿の見方尿の見方

尿の色と病気の関係

健康な人の尿の色は、淡黄色から淡黄褐色です。これは、胆汁(※1)に含まれる赤褐色の色素が混ざっているためです。この尿の色は、体調によって変わります。

起床時や、運動などで汗をたくさんかいた時には、少し色の濃い尿が出ます。反対に、水分をたくさん飲んだ時や、汗をあまりかかない寒い時には、淡い色の尿がでます。

尿の色はこの他に、病気や食事、飲んでいる薬によっても変わります(表)。

また、糸球体腎炎や腎硬化症などにより腎尿細管に障害が出て、たんぱく質が尿に漏れ出している場合には、尿が泡立ちます。色だけではなく、泡立ちがないかも確認することが大切です。

  • ※1胆汁(たんじゅう):肝臓で作られる消化液。脂肪やたんぱく質などの消化を促す
  • ※2ビリルビン:赤血球に含まれるヘモグロビンが代謝されてできる色素。通常は胆汁を介して腸に排泄される

尿のにおいと病気の関係

健康な人の場合、排泄された直後の尿はわずかな臭いしかしません。しかし、しばらく放置された尿からは、アンモニア臭がします。これは、細菌の働きによるものです。

食事で体内に取り込まれたたんぱく質は、消化により分解されると、アンモニアを作り出します。アンモニアは肝臓で「尿素」という無害な物質に作り替えられ、尿として排泄されます。
排泄された「尿素」は細菌によって分解され、再びアンモニアになります。

排泄直後から尿に刺激臭がある場合、膀胱などに細菌が繁殖していたり、尿路に炎症が起きていることがあります。
また、尿から甘い匂いがする場合は、糖尿病の疑いがあります。

尿量と尿比重によってわかること

腎臓は、体内の水分量を一定に保つために、尿の量を調節しています。そのため、尿の量は飲む水の量によって変わってきます。このような自然な変動を超えて、尿の量が異常に減少したり、増加したりする場合があります。尿の量が減ることを乏尿、増えることを多尿といいます。

また健康診断などでは、尿中に含まれる成分の量の違いを、尿比重として測定します。比重の高い尿を濃縮尿、低い尿を希釈尿といいます。

この比重と尿量の組み合わせによって、色々な病気が予測できます。
比重が高くて尿量が多い場合は糖尿病が、比重が低くて尿量が少ない場合は腎障害が疑われます。

このように、尿は「色」「におい」「量」などで、身体の状態を推測するための様々な情報を与えてくれるのです。

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。

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