透析のいろいろを知ろう

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

なぜ透析が必要になるのかなぜ透析が必要になるのか

命をつなぐ血液浄化の代行

腎臓は余分な水分や毒素を適切に振り分けて体内を浄化する役割を持っています。しかし、腎臓の働きが正常な時の10%以下になると、自分の腎臓で血液のろ過が充分に行えず、体内に老廃物が蓄積してきます。これにより尿の異常、部分的なむくみ、高血圧になることがあります。

腎臓の働きが不十分になった状態を腎不全といいますが、慢性腎不全になると「尿毒症」(※1)という病気になり、倦怠感や食欲低下、悪心、嘔吐(おうと)、頭痛といった症状が出現し、重症の場合、全身けいれんなどの症状が現れることもあります。心不全や肺水腫を起こし、息切れや呼吸困難なども出現しやすくなります。

このような状態を放置しておくと命の危険にかかわってきます。命をつないでいくために人工的に血液の浄化を行うのが透析療法です。

透析療法には次のような役割があります。
腎臓の機能低下による血液中の老廃物の排泄
尿が出ないことによって体内にたまる余分な水分と塩分の除去
電解質・血液のpH(ペーハー ※2)の異常の是正

透析療法を行うことで、ある程度まで普通に生活することが可能になります。しかし透析療法そのものに腎臓をよくする作用はありません。また腎臓の働きを完全に代行できないため、腎臓が産生する造血ホルモンを注射したり、内服薬を服用したりして、透析では代行できない腎臓の機能を補います。

透析が始まると「体に入る水分量」と「体から出される水分量」のバランスが崩れ、体内の水分は過剰になります。そのため、飲水量を制限する必要があります。

  • ※1尿毒症:腎機能が著しく低下し、さまざまな老廃物や尿毒物が体内にたまることによる症候群のこと。心臓、消化器、脳神経などの働きに障害が起こる
  • ※2pH (ペーハー):酸性・アルカリ性の度合

透析を導入する際の適応基準

慢性腎不全における透析の導入基準値は、1991年に厚生省(現厚生労働省)科学研究・腎不全医療研究班によって作成され、現在でも広く使用されています(表)。

「臨床症状」「腎機能」「日常生活の障害程度」の3つの項目を評価して点数化し、60点以上が透析導入の目安となっています。

現在、日本において約33万人の患者さんが透析療法を受けているとされています(2014年末時点 ※3)。また、透析導入患者さんの3〜4%程度が多発性のう胞腎が原因で透析を受けており、毎年約1,000人の方が透析治療を開始しているというデータもあります(※3)。

日本の透析医療は今日まで発展を続け、患者さんの生存率は世界でもトップクラスであり、すでに我が国において普遍的な医療になっています。

  • ※3「わが国の慢性透析療法の現況」(2014年12月31日現在)日本透析医学会

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。