腎臓病の病態と検査

[監修]東京女子医科大学 血液浄化療法科 特任教授 土谷 健 (つちや けん)先生プロフィール

主な腎臓病の病態主な腎臓病の病態

慢性腎臓病(CKD)とは

慢性腎臓病(CKD)は、慢性的に腎臓の働きが低下する状態を引き起こす病気の総称です。具体的には腎臓の働きが健康な人の60%以下に低下する(GFR注)が60mL/分/1.73m2)か、蛋白尿が出るといった腎臓の異常が3カ月以上続いている状態を示します。

初期のCKDは自覚症状に乏しく、本人が気づかない間に病気が進行し、気づいた時には腎臓の働きが低下してしまうといったことが起こるため注意が必要です。

CKDが進行すると透析が必要になるほか、心血管疾患を発症する危険性が上昇します。なお、CKDが進んでから現れる自覚症状には、むくみ、疲労感、夜間の尿、息苦しさなどがあります。

CKDは糸球体腎炎や多発性のう胞腎といった腎臓の病気が原因で起こることもありますが、高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、メタボリックシンドロームといった生活習慣病が原因となることが明らかになっています。

CKDを予防するためには定期的な検査による早期発見と、生活習慣病の危険因子を減らすよう生活習慣の改善が大切です。CKDは健康診断で行われる尿検査や血液検査でわかりますので、健康診断は欠かさず受けるようにしましょう。

注)GFR(糸球体ろ過量):腎臓の働きの程度を示す指標で、血液検査により推定値を計算することができる

ADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)

ADPKD/多発性嚢胞腎は腎臓にのう胞と呼ばれる液体の入った袋がたくさんできる遺伝性の病気です。

のう胞は生まれた時から少しずつ両方の腎臓にでき、年齢とともに増え、大きくなります。のう胞が増えるに従って腎臓の組織が圧迫されて腎臓の働きが低下します。

30〜40歳くらいで症状があらわれるようになり、60歳くらいまでに約半数の患者さんが透析を必要とする末期腎不全になります。

ただし、病気の進行には個人差があり、また、最近は進行を遅らせる薬もありますので、すべての人で透析が必要になるとは限りません。

ADPKD/多発性嚢胞腎はPKD遺伝子の変異が原因で起こります。遺伝子は身体のさまざまな特徴を親から子に伝えます。

遺伝子は通常対(つい)になっており、ADPKD/多発性嚢胞腎の患者さんでも正常な遺伝子も持っていることから、ADPKD/多発性嚢胞腎の患者さんのすべての子どもがADPKD/多発性嚢胞腎を発症するとは限りません。

また、ごくまれにですが、両親がADPKD/多発性嚢胞腎でなくても発症することがあります。これは生まれた時に生じたPKD遺伝子の突然変異によるものです。

また、発症するしくみですが、変異遺伝子を受け継いだ患者さんが持っているもう片方の正常な遺伝子が変異することにより、正常な遺伝子が喪失し、のう胞ができるようになると考えられています。

腎臓病の1つにADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)という遺伝性の病気があります。腎機能を低下させる遺伝性の腎臓病について、気になる方、知りたい方はここをクリック。