食生活とADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)について

ADPKD(常染⾊体優性多発性嚢胞腎)の患者さんは、若年から高血圧を合併することが知られています。⾷塩を摂り過ぎるとさらに⾎圧は上がります。また、ADPKDでは脱水にならないように水分を摂取することが大切ですが、過剰な⾷塩摂取は口渇が強くなるため余計に水分を摂取する必要が出てきます。

まず塩分を気にすることから始めましょう。

塩分制限の目安は1日3~6gと言われていますが、少しずつ塩分摂取量を少なくして慣れていけば良いでしょう。塩分摂取量を正確に把握することは難しいですが、尿の成分を調べることにより推定することができます(1日食塩摂取量計算式はこちら)。

⾷品に表⽰されているナトリウム量(g)は、それを2.54倍すると塩分相当量(g)になりますので参考にしていただければと思います。

⾷品表⽰のナトリウム量(g)× 2.54 = 塩分相当量(g)

中には塩気を感じられないような食品でも塩分がかなり入っているものもあるので、注意が必要です。代表的なのがパン、麺(自体)、加工食品(スープ、ハム、ソーセージ、練り製品など)、お菓子・スイーツなどです。調味料では、調理酢、ドレッシングなどです。

また減塩だからいいというわけではありません。梅干し、漬物、みそ汁などは、それらを食べる回数を少なくすることで1日の塩分摂取量を減らすことができます。食事中あるいは食事の後に喉が渇き、水分をたくさん飲みたくなる場合は、塩分をたくさん摂ったと考えてください。

また、肥満も腎臓に悪い影響を与えます。ADPKDでは肥満があると腎臓の嚢胞が⼤きくなりやすく、腎臓の働きも早く悪くなることが最近の研究でわかってきました。

まず毎日体重を測りましょう。体重は一日の中で変動します。朝が少なく、夜が多くなります。できるだけ決まった時間に測ってみてください。

体重管理の⽬安としては、⾷事の改善に運動を組み合わせながら、「BMI」を25未満に維持することが⽬標となります。

BMI=体重(kg)÷ ⾝⻑(m)÷ ⾝⻑(m)

適正体重にするために食生活を見直しましょう。

次に1日のエネルギー(カロリー)摂取量を把握しましょう。体重が増えてくるようであれば、単純に数日間の摂取カロリーが多いと考えてください。運動不足などによって消費カロリーが多少は減りますが、それほど多くありません。(基礎代謝量・1日の必要エネルギー量計算式はこちら)。

炭水化物のうち糖質(ごはんやパン、麺類など)を減らす(参考:大塚製薬 栄養素カレッジ「炭水化物」)、脂質が多く含まれる肉類や乳製品、油を使用した料理(揚げ物など)を控えめにする(参考:大塚製薬 栄養素カレッジ「脂質」)など、できることからやってみてください。

適正な体重にするために、運動も大切です。運動をしないと筋肉量が減って基礎代謝量が減ってしまいます。運動は消費カロリーを増やすというより基礎代謝量を維持する目的で行うと考えてください。

*基礎代謝量:生命維持のために必要なエネルギー量。心臓の動き、呼吸など、何もしていなくても使われるものです。

トレーニングのようなきつい運動が必要というわけではなく、ウォーキングやジョギングなどの有酸素運動で十分です。時間を作って運動できない場合でも、通勤などで歩く距離を延ばす、なるべく階段を使う、空き時間にストレッチや体操(筋トレ)をする、などできることはあるはずです。

また、基礎代謝量の増加は、バランスの良い食生活をする、脳への刺激を増やす、身体を温める、水分を摂る、などによっても得られます。

その他にもたんぱく質やリン、カリウムの摂取制限が必要となることがあります。これらについては、患者さんの腎機能などの検査結果により制限が異なりますので、主治医ならびに管理栄養士とよく相談してください。