わたしのADPKD体験談 第19回 新潟県在住 Nさん

病気になって自身の食生活を見直したことが、新たな仕事やボランティア活動へとつながり、第二の人生を豊かにしてくれています。

病気になって自身の食生活を見直したことが、
新たな仕事やボランティア活動へとつながり、
第二の人生を豊かにしてくれています。

看護師として、母として忙しい毎日を送っていた頃にADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)と診断されたNさん。治療を続けながら仕事も子育ても頑張ってきた目まぐるしい日々の経験が、現在の生活に目標と張り合いを与えてくれます。

看護師として、母として忙しい毎日を送っていた頃にADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)と診断されたNさん。治療を続けながら仕事も子育ても頑張ってきた目まぐるしい日々の経験が、現在の生活に目標と張り合いを与えてくれます。

看護師の仕事を続けたことで、同じ疾患の患者さんに寄り添うことができた 看護師の仕事を続けたことで、同じ疾患の患者さんに寄り添うことができた

NさんがADPKD(常染色体優性多発性嚢胞腎)の診断を受けたのは、内科の看護師として働いていた2003年のことです。以前から貧血の症状はあったものの、その他に体調不良を感じることもなく、また、働きながら3人の息子さんを育てる母親としても目の回るような忙しい日々を送っていた頃でした。
「父は私が幼い頃に亡くなっており、母が腎臓を患ったという話も聞いたことがなく、ADPKD/多発性嚢胞腎という疾患と自分が関わることなど夢にも思っていませんでした。とはいえ、伯父が人工透析を受けており、勤務していた病院の医師に『遺伝性の疾患でもあるので、いずれ検査を受けた方がよい』と言われたことはありました」。

しかし当時、Nさんは働き盛りの子育て世代でした。健康診断で何年も貧血を指摘されていましたが、精密検査は先延ばしにしていました。そして2003年、血尿の症状が突然現れたことでようやく精密検査を受けることになり、ここでADPKD/多発性嚢胞腎と診断されたそうです。
「『私はこういう疾患だと診断された』と母に説明しましたが、聞いたこともない病名である分、特に重くは受け止めなかったようで助かりました。また、当時高校生だった長男をはじめ3人の息子たちにも念のため話をしましたが、痛みがあって辛いというような疾患でもありませんから、彼らもすんなりと受け入れたようでした。私自身も必要以上に悲観的になることはありませんでしたね」。
その分、看護師として勤務していた病院の主治医にもしっかり相談し、ADPKD/多発性嚢胞腎治療薬の効き目や副作用を確認するために行われる臨床試験への参加を2004年に決めました。
「私は当時、病院で脂質異常症や糖尿病、そして腎臓疾患等を診る総合内科の病棟に勤務していました。そのため、患者さんの中にはADPKD/多発性嚢胞腎の患者さんもいたのです。私の体験をお話しすることで、『看護師さんからそういう話が聞けると安心する』と言ってくださる方も多く、少しでも患者さんの不安を取り除けることはうれしかったですね」。

必要以上に不安に感じることはない。病気という経験で新しい道も見付かった 必要以上に不安に感じることはない。病気という経験で新しい道も見付かった

3人の息子さんが成人した後、ADPKD/多発性嚢胞腎が遺伝性の疾患であることを改めて話したそうです。しかし、かつてのNさんがそうだったように、忙しい働き盛りの息子さんたちは特に症状が現れていないこともあり、まだ検査は受けていません。
「タイミングを見て受診することを勧めてはいます。しかし、以前とは違い人工透析を遅らせるための治療法が誕生し、選択肢が増えていることから必要以上に不安に感じることはないとも思っています」。
治療を続けながら看護師としての仕事と子育てをやり遂げたNさん。息子さんたちも立派に成人した現在は、第二の人生を謳歌中です。もちろん、自宅でのんびりとしてばかりいるわけではありません。新しい仕事を見付け、スーパーマーケットでパートタイマーとして働いています。
「ADPKD/多発性嚢胞腎と診断された後に栄養指導を受けたことで、食生活にも気を付けるようになりました。特に塩分を控えるように心掛けて、味噌汁は具だけ食べて汁は飲まないようにしたり、おひたしには醤油をかけず、一箸ごとに少しだけ付けたりするようにしています。また、塩の代わりにレモンや酢、香草を使うなど、調理にも工夫を凝らすようになりました。そのため、以前より食事に興味が湧き、調理が面白くなりました」。

また、Nさんは食生活改善推進員の活動も始めています。これは、全国の自治体が開催する養成教室の修了者によるボランティアで、食を通じた健康づくりを行うものです。親子を対象とした食育や、中高年向けの生活習慣病予防のための料理教室などがあり、Nさんも公民館やイベント会場などで栄養や調理の指導を行っています。

「自分の食生活の管理にも役立つので、食生活改善推進員のボランティア活動は一石二鳥ですね」。
仕事にボランティア活動にと忙しいNさんですが、プライベートを充実させることにも余念がありません。体力づくりのため、週1回はヨガに通っています。また、看護師時代の友人たちと旅行に行くのも現在の生きがいだと言います。2017年には台湾に旅行し、普段は節制している分、少し羽を伸ばして食事を楽しんだそうです。
「国内の名所巡りも好きで、昨年は伊勢神宮にも行きました。これからもやりたいことをやるために、ADPKD/多発性嚢胞腎としっかりと向き合いながら治療をきちんと続けていきたいですね」とNさんは話します。

ADPKD/多発性嚢胞腎と診断された患者さんへのメッセージ

看護師としての経験から、週に2回、3回と透析を受ける患者さんと数多く接し、その負担を目の当たりにしてきました。私自身は主治医を信じて治験の段階から治療を受ける道を選択し、15年経過した今でも腎臓に関わる各種の数値が当時と変わらず安定しています。自分の選択は正しかったと思っています。皆さんも、信頼できる主治医とよく話し合い、自分の人生には何が一番大切かをしっかりと考えることで、進むべき道が見えてくると思います。一緒に頑張りましょう。

看護師としての経験から、週に2回、3回と透析を受ける患者さんと数多く接し、その負担を目の当たりにしてきました。私自身は主治医を信じて治験の段階から治療を受ける道を選択し、15年経過した今でも腎臓に関わる各種の数値が当時と変わらず安定しています。自分の選択は正しかったと思っています。皆さんも、信頼できる主治医とよく話し合い、自分の人生には何が一番大切かをしっかりと考えることで、進むべき道が見えてくると思います。一緒に頑張りましょう。

2018年5月作成
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