第8回 岐阜県在住Kさん

私の体験が誰かの役に立つかも知れない 挑戦することに無駄は一つもないと思います

私の体験が誰かの役に立つかも知れない
挑戦することに無駄は一つもないと思います

サムスカ導入のための入院は、家事に子育てにと奮闘してきた自分にとっては骨休めができる癒やしの時間だったと振り返るKさん。残念ながらご自身は、肝機能障害によりサムスカの服用は断念せざるを得なくなりましたが、治療の経験は無駄ではなかったと語ってくださいました。

サムスカ導入のための入院は、家事に子育てにと奮闘してきた自分にとっては骨休めができる癒やしの時間だったと振り返るKさん。残念ながらご自身は、肝機能障害によりサムスカの服用は断念せざるを得なくなりましたが、治療の経験は無駄ではなかったと語ってくださいました。

Kさんの代表的な一日

目の前にある機会には何でも挑戦してみたい
以前の病気が性格を前向きに変えてくれた

Q 妹さんに透析が必要となったことが、サムスカ服用のきっかけだったと伺いました。

15年ほど前、子育て中に産婦人科で行った検査で尿潜血 3+という結果になり、精密検査を受けたところADPKDと診断されました。しかし当時は、生活習慣病の一つ程度の認識で、血圧にも変化はなく、特に対策は行っていなかったんです。ところがそれから10年後、同じくADPKDと診断されていた妹の腎機能が急激に低下し、透析が必要な状態にまで悪化しました。「ADPKDは生活習慣病とは違う病気なんだ」と実感したことを覚えています。幸いにも妹は母親から腎移植を受けることができましたが、それをきっかけとして私もADPKDとしっかりと向き合う必要があると思いました。それから3年ほどしてサムスカが治療薬として服用できるようになった頃、私のクレアチニン値が高くなり続けていたことから主治医に服用を勧められ、ぜひ使ってみたいと思いました。

Q サムスカの服用に迷いはなかったそうですね。

主治医から副作用について説明があったので、もちろん不安はありました。一番は、1日に6Lもの水をどうやって飲むのかということ。きっと大変で苦しいだろうと思いました。夫は、自分の腎臓をあげるから薬を飲む必要はないと言ってくれました。両親も、大変な思いをしてまで飲む薬なのかと反対意見だったのです。それでも、私にはやってみたいという気持ちの方が強かった。もしも子どもがADPKDと診断された場合にも、私の体験が役に立つかもしれないという思いもありましたね。もともとチャレンジ精神旺盛なタイプではなかったのですが、以前に甲状腺がんを経験したことで、できる治療があるのならば挑戦せずに後悔するのは嫌だ、そのときにしかできないことがあると思うようになりました。病気が前向きな性格に変えてくれたようなものですね。

Q サムスカを開始するための入院はいかがでしたか。

息子を2人出産してからは、家事や子育てに大忙しで毎日走り回っていました。だから、3泊4日の入院生活は意外にものんびりと過ごせたんです。おそらく、主婦の方はそう感じる人が多いのではないでしょうか。実際にサムスカの服用を開始すると、1時間に1回はトイレに行きたくなりましたが、心配だった飲水も喉が渇くので自然に行えて、気付いたら6L飲んでいた、という状態です。案ずるより産むがやすしとは、まさにこのことだと思った入院生活でした。

服用前の不安はあったが
やってみれば何とかなるものと実感

Q サムスカの服用からまもなく、腎機能に良い変化が表れたそうですね。

実は、サムスカと出合う少し前から、背中にチクチクした痛みや重さを感じるようになっていましたが、サムスカを服用後は症状が楽になりました。実際に、0.9mg/dL近くあったクレアチニン値が0.79mg/dLまで下がりました。また、服用開始時には1時間に1回はトイレに行く必要がありましたが、すぐに体が慣れて日中は1.5〜2時間に1回、夜間は4時間に1回程度で済むように。仕事は倉庫で荷物のピッキングを行う作業でしたが、不便はなかったですね。トイレは混雑しているところへ行くときに気にする程度です。飲水は食事のときと就寝中に合わせて4Lほど、その他の時間には2L程度を小分けに飲むスタイルに落ち着きました。サムスカを服用することで、未来に希望が湧いてきて気持ちがとても明るくなりました。

Q しかし、サムスカの服用が続けられなくなってしまったとか。

肝機能障害が起きてしまったんです。私は若い頃から甲状腺疾患があり、30年以上薬を飲んできました。そのことで肝臓が弱っていて、影響したのかもしれません。はっきりとした原因は分かりませんが、サムスカの服薬開始から半月ほどで血尿が出たり、その後は全身にじんましんが現れたりもしました。結局、サムスカは4カ月ほどで服用を中止せざるを得なくなり、腎臓には良い効果が表れていたと先生から言われていただけに、本当に残念でした。それから2カ月後には肝機能障害が完全に回復したので、主治医とサムスカの服用再開を考えてみましたが、肝臓への影響を考えると踏み切ることはできませんでした。

Q 現在はADPKDに対してどのような対策を取っていますか。

血圧がやや高めに推移してきたため降圧剤を服用していることと、水分を多めに摂るようにしています。ただし、むくむほど飲んではいけないと言われているので、1日2L程度を目安にしています。食事も以前より厳密に薄味を心がけるようになりましたね。今では3カ月に1回通院しながら、できる対策を無理のない範囲でやっているところです。

Q サムスカの服用を考えている患者さんにメッセージをいただけますか。

もし飲水やトイレのことで迷っている人がいたら、とにかく服用してから考えることをお勧めしたいですね。私も服用前は不安がありましたが、やってみれば何とかなるものです。夜中にトイレに起きることで睡眠不足になるのではと考える人もいると思いますが、赤ん坊を育てた経験のある母親の立場から言わせてもらえば、さほど不安に感じることはないと思います。赤ん坊は1時間おきに泣いて起きて、ミルクをあげておむつを替えて、寝かせたと思ったらまた泣いて起きるの繰り返し。あの頃の大変さに比べれば、何とかなるものです。当時、私のママ友たちにもADPKDや治療の話をしていたのですが、みんな口をそろえて「あなたなら大丈夫よ!」と励ましてくれました。私は残念ながら服用を続けることができませんでしたが、決して無駄なことではなかったと思っています。

記者の感想

まさに「母は強し」。治療や病気に対して、とても前向きで力強いお言葉をいただきました。残念ながらKさんはサムスカの服用を続けることができませんでしたが、「私の体験が誰かの役に立つかもしれない」「これからの子どもたちのためにこの経験を伝えたい」と明るく語ってくださるその笑顔に、元気をもらいました。
積極的に人生を楽しむKさんの、家族に対する想いや今後の目標、ADPKD患者さんへのメッセージなどを「わたしのADPKD体験談」でも紹介しています。ぜひご覧ください。

2017年1月作成
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