第3回 東京都在住Iさん

サムスカ服用後に受ける検査の結果から治療の効果を実感できると、患者として本当にうれしく、未来への大きな希望となります。

サムスカ服用後に受ける検査の結果から治療の効果を実感できると、患者として本当にうれしく、未来への大きな希望となります。

ホテルマンとして働くIさん。サムスカの服用を開始してからも、喉の渇きやトイレの回数とも上手に付き合い、精力的に仕事に取り組んでいます。主治医との強い信頼関係の中で順調に治療を続けているIさんに、多発性嚢胞腎(ADPKD)との向き合い方についてお話を伺いました。

ホテルマンとして働くIさん。サムスカの服用を開始してからも、喉の渇きやトイレの回数とも上手に付き合い、精力的に仕事に取り組んでいます。主治医との強い信頼関係の中で順調に治療を続けているIさんに、多発性嚢胞腎(ADPKD)との向き合い方についてお話を伺いました。

Iさんの代表的な一日

他にも水筒などを持ち歩き、こまめな飲水を心掛けています。

Q どのような経緯で、いつごろADPKDであることを知りましたか?Q どのような経緯で、いつごろADPKDであることを知りましたか?

私は、38歳の時に自宅でくも膜下出血で倒れ、近くの病院へ救急搬送されました。幸いにも手術は成功し、後遺症もなく済みました。しかし、入院生活が2週間を過ぎた頃からひどい血尿が出るようになり、腹部のMRI検査を受けました。そこで、ADPKDを発症していることが明らかになりました。
当時、私の父がADPKDですでに人工透析を行っており、長姉も同様に人工透析を受けている状態でした。そのため、この病気の存在のこと、そして遺伝性であることも知っていたため驚きはありませんでした。

Q ADPKDと診断された時、どのように思いましたか?また、ご家族はこの病気をどのように受け止めていますか?Q ADPKDと診断された時、どのように思いましたか?また、ご家族はこの病気をどのように受け止めていますか?

“ついに来たか”と、正直ショックではありました。しかし、ADPKDについては以前から情報収集を行い、どんな病気であるのか、どのような症状が起こり、どういった経過をたどるのか、そして遺伝性であることなど、知識は十分に持っていました。そのためか、自分が発症したことに対しては冷静に受け止めることができました。
父も長姉も同じ病気ですから、母や姉たちも驚いてはいませんでした。ただし、父にだけは私が発症したことを今でも伝えていません。透析治療の負担になるといけませんし、長姉に続いて私にも遺伝したという事実は、父にとって大きなショックであると思いますから。

Q サムスカの服用に至った経緯をお聞かせください。Q サムスカの服用に至った経緯をお聞かせください。

くも膜下出血による入院の後は血圧が若干高めだったため、降圧剤の処方と定期的な検査を行っていました。そして2015年3月、嚢胞が少しずつ大きくなってきていることやサムスカ服用の条件を満たしていたために、サムスカの服用を開始しました。もちろん、頻尿や尿量の増加といった副作用があることは理解していましたが、仕事や日常生活に及ぶ影響を想像しても“何とかやっていける”と感じていました。それ以上に、すでに父と長姉が人工透析を受けている姿を見ていたために、病気の進行を遅らせる可能性がある治療ならぜひ受けたいという気持ちが強かったですね。
入院に際しても主治医がとても丁寧に説明をしてくださり、常に親身になって対応してくださったため、不安に思うことは全くありませんでした。新しい治療に対して怖いと感じる患者さんもいると思いますが、主治医との信頼関係が構築されていれば治療に踏み出しやすくなるのではないでしょうか。

Q 治療を始めた頃のことについてお聞かせください。Q 治療を始めた頃のことについてお聞かせください。

3泊4日の入院でサムスカの服用を開始しました。初日のトイレの回数は1時間に1回ほどだったと記憶しています。私の場合、尿量もさることながら、喉の渇きが激しく、水を飲んでも飲んでも喉が渇いて大変でした。
しかし、あらかじめ主治医から説明を受けていたことと、自分で事前に情報収集していたこともあり、想定の範囲内の症状と受け止めることができ、大慌てすることはありませんでした。また、先生が毎日朝と夕方に病室に来て検査結果を丁寧に説明してくださったため、安心して入院生活を送ることができました。

Q 現在の生活についてお聞かせください。お薬の服用など日常生活で特に注意されていることはありますか? Q 現在の生活についてお聞かせください。お薬の服用など日常生活で特に注意されていることはありますか?

サムスカは朝7時と夜7〜8時に服用しており、トイレの頻度はピーク時の午前中でも1時間に1回程度、就寝中にトイレに起きるのは1〜2回程度です。私の職業はホテルマンであり、以前はレストラン部門の担当でした。ADPKDと診断された後、会社のご厚意によって企画部に配属となり、現在は広報関係の打ち合わせの他、ホテルのイベント企画や立ち会いなどが主な業務です。
服用を開始したばかりの頃はトイレのタイミングがつかめず、午前中の業務の中で慌ててトイレに駆け込むこともありました。しかし今では、時間を見つけて先にトイレを済ますことで、打ち合わせなどにも支障なく対応できています。サムスカを服用していることで、仕事も含めた日常生活で制限していることはほとんどありません。

Q 水分摂取の点で特に注意されていることはありますか?Q 水分摂取の点で特に注意されていることはありますか?

インターネットで500mLのミネラルウォーターを大量に購入しておき、職場のデスクにストックしています。また、麦茶をつくり1Lの水筒に入れて毎日持ち歩いています。主治医と相談し、水分は1日5.5L程度摂取しています。私の場合、サムスカを服用した直後が特に喉の渇きを感じるため、午前中は頻繁に水分を摂取します。しかし、午後には喉の渇きが少しずつ治まるため、それほどガブ飲みする必要もありません。午後の仕事中は2時間程度水を飲まなくても苦ではありませんね。

Q その他、治療を続けていくにあたって日常生活で心掛けていることがあればお教えください。Q その他、治療を続けていくにあたって日常生活で心掛けていることがあればお教えください。

塩分は控えるように心掛けています。しかし、父と長姉のこともあり、わが家の食事は昔から薄味が基本だったため、大変だと感じることはありません。自宅では塩分50%カットの醤油や味噌を使い、和風だしやコンソメなども塩分控えめのものを選んで買っています。外食では塩分が多くなりがちですが、会社や友人との付き合いもあり、外食は一切しないなどの厳しい制限は設けていません。外食でも塩分が少なそうなメニューを選び、ソースなどは別皿に分けてもらって量を調節するなどの工夫をすれば、特に問題なく楽しめます。
お酒の席にも好んで参加しています。アルコールは利尿作用があるためサムスカの服用中は飲まないという方もいるかもしれませんが、私の場合は必ずチェイサーとして水を頼むことで対応しています。

Q 病気と向き合う生活の中で、心の支えとしているものはありますか?Q 病気と向き合う生活の中で、心の支えとしているものはありますか?

サムスカを服用して8カ月経過した時点で行ったMRI検査では、腎容積が少し小さくなっていることが分かりました。薬の効き目がしっかり表れていることが理解できると、患者としては本当にうれしく大きな希望となります。人工透析を少しでも先延ばしにできるのではないか、あるいは回避もできるかもしれないと期待を持っています。
ADPKDだからといって、自分自身で“これをしてはいけない”、“あれをしなければならない”などと気を遣い過ぎず、未来への期待を持って前向きに生活すること。そして、病気について知るべきことはきちんと知って治療にしっかり取り組み、必要以上にナーバスになり過ぎないこと――これが、私がADPKDと向き合う中で大切にしていることです。冷静に、そして気長に人生を送っていきたいですね。

記者の感想

治療を開始してからもADPKDと上手に付き合い、ホテルマンとして活躍し続けているIさん。病気や治療について理解することで日常生活への配慮も的確に考えられるため、不便を感じることはないと言います。冷静に事態を見極めながら柔軟に対処していく姿から、Iさんの強さを感じることができました。
積極的に治療に取り組むIさんの趣味やADPKD患者さんへのメッセージなどを「わたしのADPKD体験談」でも紹介しています。ぜひご覧ください。

2017年5月改訂
SS1705202