第11回 新潟県在住Nさん

治験の段階から服薬を続けて15年。数値の変化もなく安定していることで、第二の人生を生き生きと過ごすことができています。

治験の段階から服薬を続けて15年。
数値の変化もなく安定していることで、第二の人生を生き生きと過ごすことができています。

看護師として、母として忙しい毎日を送っていた頃に多発性のう胞腎(ADPKD)と診断されたNさん。人工透析をできるだけ先延ばしにしたいという思いから、治験の段階からサムスカを導入しました。15年が経過した現在でも腎臓関連の数値は変わることなく安定し、仕事にボランティアに精力的な日々を過ごしています。

看護師として、母として忙しい毎日を送っていた頃に多発性のう胞腎(ADPKD)と診断されたNさん。人工透析をできるだけ先延ばしにしたいという思いから、治験の段階からサムスカを導入しました。15年が経過した現在でも腎臓関連の数値は変わることなく安定し、仕事にボランティアに精力的な日々を過ごしています。

Nさんの代表的な一日

服薬後の変化を職場にきちんと伝えたことで、以前と変わらず仕事を続けることができた

Q 治験段階の2004年からサムスカを服用していらっしゃいますが、迷いはありませんでしたか。

当時の私は夜勤もある病棟勤務の看護師をしており、高校生を筆頭に3人の息子を育てる母親でもありました。目の回るような忙しい日々を送り、同時に看護師として数多くの透析患者と接する立場でもありました。週に2回、3回と数時間ずつ拘束される透析治療を受けることになれば、今の自分の忙しさとは比較にならないほど時間的な負担も大きいと感じていました。そのため、医師からサムスカの臨床治験の話をいただいたときには、迷うことなく参加を決めました。

Q 実際にサムスカを服用して、予期していなかったトラブルなどはありませんでしたか。

1日に3〜4Lの水分を取るように指導され、服用前はそれほどたくさん飲めるのかと不安を感じました。しかし、実際に服用してみると喉が渇くので、無理せずそれだけの量を飲水できたのは予想外でしたね。私が看護師として勤務していたのは脂質異常症や糖尿病、そして腎臓疾患等を診る総合内科の病棟で、患者さんの中にはADPKDの方もいらっしゃいました。サムスカの導入入院で、「こんなに喉が渇くものなのか」と不安を訴えていた患者さんに対して私の体験をお話しさせていただいたこともあります。患者と看護師という両方の立場で目の前の患者さんに寄り添うことができ、「看護師さんにそう言ってもらえると安心する」という言葉をいただいたときには本当にうれしかったですね。

Q 治療開始後も、看護師の仕事を続けることができましたか。

治療を開始したら少なくとも1日に3〜4Lの水を飲むように指導されていたため、以前と同様に仕事をするためにも、上司に1時間半から2時間に1回はトイレに行きたくなることなどをしっかり報告しました。病院勤務ということもあるかもしれませんが、これによって職場の理解が得られ、治療前と変わらず勤務を続けることができ、夜勤も減らすことなく続けました。水は水筒に入れて自宅から持っていくようにしていました。治療前には、たくさん水を飲んで何度もトイレに行くということがとても大変なことのように思えるかもしれませんが、実際に生活のリズムの中に組み込まれてしまえば、意外と負担なくできるものです。

Q 治療を初めて15年が経過しますが、開始直後と現在とで飲水量やトイレの回数に変化はありますか。

服用開始直後は1時間に1回とトイレに行く回数が頻回になるものの、しばらくたつと体が慣れて回数が減ってくるというケースもあるようです。しかし、私の場合は15年前も今もほとんど変化はありません。ただし、加齢とサムスカの副作用が重なったのか、トイレの回数が以前より多くなったこともありました。そのため、90mgだった服用量を減量し、今では60mgで落ち着いています。トイレの回数も1時間半から2時間に1回程度に戻りました。飲水量も以前と変わらず、1日4L程度で足りています。

年に1回の検査で数値の悪化がないことが、治療を続けるモチベーションになっている

Q 日常生活の中で大変だったことはありますか。

治療を開始した当時は10代の息子3人を育てていたので、学校行事の参加などでは工夫が必要でした。例えば、末の息子は野球部に所属していたため、父兄として遠征や合宿の手伝いをするときには、トイレはあるものの飲み水の確保ができない可能性も考えられるため、必ず水筒を持参するようにしていました。逆に、夏休みなどで息子たちを旅行に連れて行く際には、トイレのチェックを怠りませんでした。サムスカの服用に伴う強い口渇に備え、水筒は出かけるときには2〜3本準備するようにしていました。また、利尿作用によって水分が体の外に出てしまうため、水分を多く取って脱水にならないように気を付けました。

Q 現在は看護師を退職され、新しい職場で働かれているそうですね。

ADPKDと診断された後に栄養指導を受けたことで、食生活にも気を付けるようになりました。そのせいもあり、以前よりも栄養や調理に興味が湧いています。現在はスーパーマーケットでパートタイマーとして働いていますが、まだ働き始めたばかりの新しい職場ということもあり、ADPKDのことは話していません。仕事のある日は起床直後と出勤前、そして始業の8時のタイミングでコップ1杯の水を飲むようにしており、8時から12時までの勤務時間中は脱水にならないように水分補給を心掛けています。

Q 夜間の頻尿はありませんか。

自宅でリラックスしているときには、相変わらず1時間半から2時間に1回はトイレに行っています。私の住む新潟県は冬がとても寒いこともあり、やはり夏期よりも冬期の方が回数は多くなります。それでも、夜間にトイレに起きるのは2回程度です。季節を問わず、喉が渇くのに気を付けて必ずコップ1杯の水を飲んで就寝するようにしていますが、暖かくなってくると就寝後のトイレの回数は1回に減りますね。

Q 長期間、しっかりと服用を続けてこられたモチベーションになったものは何ですか。

服用を開始するときに、主治医から「これまではADPKDに対して血圧コントロールや食事療法以外にできることはなかったが、ようやく薬ができた」と言われたことですね。そして、年に1回の検査で各種の数値に悪化が見られず、最新のクレアチニン値も15年前とほとんど変わらない0.56mg/dLと、確かな成果が実感できることも大きいです。今後も仕事を続けて趣味である旅行も楽しむためにも、サムスカの服用を続けていきたいと思っています。

記者の感想

元看護師ならではの冷静さと判断力で15年間ADPKDと向き合い、しっかりと治療を続けてこられたNさん。看護師を退職された現在も、ご自身の食生活管理の経験を生かし、地域の方々に食事指導を行うボランティア活動も行っています。ますますパワフルな毎日を送られるNさんの第二の人生を応援したくなりました。

2018年5月作成
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