第7回 北海道在住Oさん

私のように20代前半でサムスカの服用を始めるケースは多いとは言えません。だから、私のケースがデータとなって蓄積され、これからの治療に生かしてもらえればうれしいですね。

私のように20代前半でサムスカの服用を始めるケースは多いとは言えません。
だから、私のケースがデータとなって蓄積され、これからの治療に生かしてもらえればうれしいですね。

大学3年生の時に腎出血によって多発性嚢胞腎(ADPKD)を発見され、止むを得ず休学することになったOさん。大学に復学するため、就職するためにも、サムスカの服用に迷いはなかったと言います。飲水管理等もしっかりと行い、今では就職活動にも精力的に取り組んでいます。

大学3年生の時に腎出血によって多発性嚢胞腎(ADPKD)を発見され、止むを得ず休学することになったOさん。大学に復学するため、就職するためにも、サムスカの服用に迷いはなかったと言います。飲水管理等もしっかりと行い、今では就職活動にも精力的に取り組んでいます。

Oさんの代表的な一日

サムスカの服用に迷いはなく飲水の“自主練”をして臨んだ

Q サムスカの存在を教えてくれたのは、お父様だそうですね。

大学3年生の夏に腎出血を起こし、ADPKDと診断されてから半年ほど経った頃です。私は休学し、大学の近くで1人暮らしをしながら通院と療養を続けていました。そうした時、父がADPKDの新しい治療薬について書かれた記事を見つけて、連絡をくれたのです。「たまたま見つけた」と言っていましたが、私のために情報収集をしてくれていたのかもしれません。私もさっそくインターネットで検索を行い、すぐにでも服用したいと思いました。激痛を伴う腎出血を起こし、就職活動目前で休学を余儀なくされたことで、二度と同じような体験はしたくないと思っていたために迷いはありませんでした。

Q サムスカ服用を開始する前から、水を飲む自主練習をしたと伺いました。

私たちの世代は、新しく知ったことはすぐにインターネットで情報収集するのが当たり前になっています。ADPKDを知った直後は病気についてもずいぶんと調べましたが、“原因が分からず治療法も確立されていない難病”という言葉に行き当たるたびに、素人の自分がこれ以上調べてもどうしようもないと感じるようになりました。しかし、サムスカの存在を知ってからは希望が湧き、自分で積極的に情報を集めました。1日に8Lもの水を飲まなければならないことを知り、不安に思う一方で服用への迷いはなかったため、少しでも早く慣れることができるよう、水をたくさん飲む練習をしてみました。ただし、薬を飲んでいるわけではなく尿の量は通常なので、先にお腹がいっぱいになってしまって苦しかったことを覚えています。

Q 治療を開始した年に復学されたそうですが、トイレの不安はありませんでしたか。

いざサムスカの服用を開始してみると、1時間に1回のタイミングでトイレに行きたくなるため、“ずいぶん出るなあ”と驚いたのが正直な印象です。しかしその分、水を1日8L飲むことには苦痛を感じませんでした。サムスカと付き合うにあたり、飲水が一番大きな不安材料だったので、そこをクリアできたことは大きかったですね。ADPKDと診断されたことや休学してしまった落ち込みから、一気に立ち直ることができました。復学した最初のうちは、90分間の講義の間に1回か2回はトイレに立たなければならないことが負担でした。しかし、半年もすれば体が慣れてきて、90分間で1度もトイレに行かなくて済むようになり、日常生活でも不便を感じなくなりました。ただし私の場合、車に揺られているとトイレが近くなる傾向があるため、高速道路など車で長距離を移動する時には、30分に1回程度サービスエリアで停まってもらいトイレに行く必要があります。

2Lの水筒で1日分の飲水量を管理

Q お住まいの北海道ならではの飲水方法があるそうですね。

水をたくさん飲むこと自体に苦痛はないのですが、私が住む北海道は冬がとても寒く、雪が降り積もっているような時期に冷たい水をたくさん飲めば体が冷えてガタガタと震えるほどです。とはいえ、生温かい水というのは非常に飲みにくく、私の場合は気持ち悪くなってしまいます。そのため、冬期の飲水は暖房を強めに効かせた室内で行うようにしています。さらに、私の個人的な感じ方かも知れませんが、こまめに少しずつ水分補給をしても、喉の渇きが癒やされず飲んだ気がしないのです。そのため、学校に行く前や昼食の時、そして学校が終わった夕方などに、まとめて2Lほど水を飲んでいます。この方法だと、500mLのペットボトルを頻繁に買ったり持ち歩いたりする手間も省けます。

Q 飲水量の管理のため2L容量の水筒が役立っているとお聞きしました。

現在、1日8Lプラスαの水分を摂取していますが、こまめに500mLのペットボトルを買っていると量が分からなくなり計算も面倒です。そこで、復学したタイミングで2Lの水筒を購入し、飲み終わったらまたくむという形で量を管理しています。先日参加した、企業のインターンシップにも水筒を持っていきました。最近は水に飽きてきたので家で麦茶をつくって、朝、水筒に入れてきています。ペットボトルで買うより経済的です。今後は就職活動で遠方へ行くことが増えると思いますので、飲水量管理のために水筒はますます必需品になると思います。

Q 治療を進めてきた中で、心身面で変化したことはありますか?

治療を始める前、腎容積が1,300mL、クレアチニン値が0.68mg/mLという数値もさることながら、肝機能の数値が高めだったことから脂肪肝気味であると指摘され、血圧も160mmHg、100mmHgという高い数値を示していました。特に血圧は父方の家系で高く、大学に入学した頃から朝目覚めると頭痛がして一日中頭が重いという症状が頻繁にありました。もちろん、当時はADPKDも高血圧も意識していませんでしたから、腎出血によって早めに発見できたとも言えます。今は降圧薬も服用し、食生活にも気を配るようになったため、血圧は安定し、肝機能の数値も改善しました。私の場合、両親にも兄弟にも腎嚢胞はありません。しかし、ADPKDは遺伝性であることから、母は私の病気に対して罪悪感を持っているようです。だからこそ、私はサムスカの治療に対する迷いがなかったのだと思います。親のせいなどとは微塵も思っていませんが、病気が原因で私が落ち込んだりしたら、それこそ親が悲しむことになります。サムスカによって以前のような生活を取り戻し、今、就職活動ができていることに感謝しています。

サムスカを服用し続けるモチベーションについて教えてください。

サムスカについてインターネットで情報収集してみると、服用を開始する人は40代以降がほとんどで、私のように20代前半は非常に少ないことを知りました。だから、私のケースがデータとなって蓄積され、これからの治療に生かしてもらえるとうれしいですね。これが私のモチベーションとなっています。

記者の感想

就職活動目前の大学3年生でADPKDと診断されたOさん。その当時の不安や焦りは想像するに余りあるものです。しかし、サムスカと出合い、自身の目標のため、そして両親のために立ち直り、新たなスタートを切ったその強さに勇気づけられた思いでした。
前向きに治療に取り組むOさんの、診断時の思いや将来の夢、ADPKD患者さんへのメッセージなどを「わたしのADPKD体験談」でも紹介しています。ぜひご覧ください。

2016年10月作成
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