第9回 滋賀県在住Fさん

忙しいけれど、子育ても仕事も両立できている今がとても幸せ。“何とかなる”の精神で、ADPKDともサムスカともじっくり付き合っていこうと思っています。

忙しいけれど、子育ても仕事も両立できている今がとても幸せ。
“何とかなる”の精神で、ADPKDともサムスカともじっくり付き合っていこうと思っています。

幼いお子さん2人を育てながら、仕事にも家事にも忙しい毎日を送るFさん。最初は不安でいっぱいだったというサムスカによる治療も、ご主人のバックアップを受けながら“何とかなる”とおおらかに受け止め、順調に続けることができています。

幼いお子さん2人を育てながら、仕事にも家事にも忙しい毎日を送るFさん。最初は不安でいっぱいだったというサムスカによる治療も、ご主人のバックアップを受けながら“何とかなる”とおおらかに受け止め、順調に続けることができています。

Fさんの代表的な一日

治療よりも授乳を優先し、すべて子どものペースに任せた

Q サムスカの存在を知ったのは出産後間もなくだったそうですね。

ADPKDの父の入院がきっかけで、私も検査をすることになりました。主治医の先生がサムスカについて詳しく教えてくれましたが、当時の私は下の子の授乳期間であり、サムスカ服用のために子どもに卒乳させるつもりはないとはっきりと伝えました。当時、下の子は1歳になったばかりでしたが、上の子は11カ月で自然に卒乳したため、同じくらいかなと思っていたんです。ところが、下の子はなかなか卒乳せず、完全に卒乳したのは結局2歳半ごろ。ちょっと長いですよね(笑)。でも、“私の都合”で子どもの卒乳時期を決めたくなかったし、子どもは2人までと思っていたので、私の人生にとっても授乳は最後となる貴重な経験。だから、今の状態を医師と相談の上、治療よりも優先して、子どものペースに任せました。

Q 卒乳後はすぐにサムスカの導入を開始したのでしょうか。

それが、その後もバタバタと忙しく、初めてサムスカについて聞いてから2年ほど経過した後に導入を開始しました。出産後は1年間の育児休暇を経て仕事に復帰していましたので、繁忙期などが重なりなかなか時間がつくれなかったという理由もありました。ADPKDは、特に初期の場合は痛みなどの自覚症状がないケース、体の見た目が変化しないケースがあり、私もそうでした。そのため、私たちのように子育てと仕事に忙しい年代ではすぐに服用に踏み切ることが難しいかもしれませんね。ただし、私の場合は服用のために子どもの卒乳を早める意思はないことや、仕事の繁忙期があることなどをその都度主治医の先生にお話ししていました。その上でサムスカ導入のタイミングを一緒に考えてくださったため、心強かったですね。

Q サムスカの導入に際してご苦労はありましたか?

トイレの回数や飲水の量が増えることなどは事前にしっかりと説明を受けていました。とはいえ、実感として理解するまでには至らず、『本当にそんなにトイレに行きたくなるのかしら?』と半信半疑だったのが正直なところです。ところが、実際に入院して服用を開始してみると、本当にトイレの回数は増えるし、お水もどんどん飲まないといけない。大変なことになってしまったと、びっくりするやら不安になるやらで大変でした(笑)。トイレは我慢しても45分ぐらいが限界だし、尿量を計測できるトイレと病室が少し離れていたので、その往復もひと苦労。こんな状態で日常生活を送ることができるのか、仕事は続けられるのかと、入院初日で後悔してしまいました。

Q 大変なスタートでしたが、今では用量を120㎎まで増量しているそうですね。

導入開始から1年4カ月ほどで、120㎎まで増やしました。入院時の苦労が嘘のようですね(笑)。増量による体調の変化もなく、トイレの回数が増えるようなこともありません。ものは考えようですが、もっと大変な病気のために薬を服用しなければならないような場合と比べたら、ADPKDは自覚症状も少なく、サムスカを服用することで進行を遅らせることに役立つのですから、ありがたいと思って治療に取り組まなければもったいないと考えるようになってきました。私の場合、透析に至っている親類もおり、その大変さを見てきました。そして、透析に至れば、仕事と子育てを両立している今のような状況はきっと保てません。サムスカの服用にはトイレの回数や飲水量の増加などの症状が表れますが、透析の大変さの比ではないと思うので、前向きに治療に取り組んでいきたいと思っています。

治療の影響を必要以上に重く受け止めないことが大切

Q 現在7歳と4歳のお子さん2人を育てながらのサムスカ服用に、ご苦労はありませんか?

もちろん、子育て中特有の工夫はしています。例えば、運動会や遠足、授業参観などの子どもの行事です。いつものようにはトイレに行きにくい状況になるため、服用の時間をずらすなどして対処しています。ただし、学校など何度か足を運んだことのある場所なら、トイレの位置なども把握できているため、さほどの苦労はありません。遠足などの付き添いで初めての場所に行く日に限っては服用を止めるときもありますが、それ以外では何とかなるものです。お正月や夏休みに子どもたちを連れて遠出する際も、公共交通機関にはトイレが整備されているため問題ありません。私の実家は遠方にあり、帰省の際には空路を利用しなければなりませんが、空港も航空機内もトイレがありますから困ることはありません。だいたいのことは何とかなるものです。

Q “何とかなる”という言葉が度々聞こえてきますが、そのように受け止められるようになったきっかけはあるのでしょうか?

実は私、こう見えてもとても心配性で、不安なことがあると「どうしよう!」とパニックになるタイプだったんです。そのため、サムスカ導入時の入院をしている間は、生活や仕事に対する不安でいっぱいでした。そんな私を変えてくれたのは、夫です。彼は、退院してすぐの私を隣県までドライブに誘いました。『車の移動ではトイレにも行けないかもしれない、冗談じゃない!』と思いました。でも、いざ出かけてみるとトイレに行きたくなれば意外とすぐに駅やコンビニなどに立ち寄れて、問題なくドライブは終了しました。そして、「何とかなるんだな」と思えてからは気持ちも落ち着いて、トイレの時間も少しずつ間隔が開いていったんです。医師はサムスカの副作用についてしっかりと説明してくれます。それはとてもいいことなのですが、患者の性格によっては必要以上に重く受け止めて不安が増してしまう可能性もあります。夫は私の性格を把握していて、不安を解消してくれました。本当に助けられたと感謝しています。

Q 仕事と治療の両立も順調ですか?

ちょうど私が育児休暇から復帰したのと同じタイミングで、職場にウオーターサーバーが導入されました。しかもラッキーなことに私のデスクのすぐ近くに設置されているため、仕事中の飲水は滞りなくできています。午前と午後で、それぞれマグカップに7〜8杯程度飲んでいるでしょうか。正確に何リットル飲まなければ、と頑張らずに、飲みたいときに飲んでいます。お客様と電話で長時間の打ち合わせをすることもありますが、その前にトイレに行っておけば何も問題はありません。薬の服用で体がどうなるか、何分後にどんな変化が表れるのかなどのペースをつかめていれば、日常生活にも仕事にも支障はありません。

サムスカを服用し続けるモチベーションについて教えてください。

現在の最大の楽しみは、やはり子どもたちの成長を見守ること。子どもたちが大人になり子育てがひと段落したら、以前習っていたエレクトーン演奏をもう一度学び直して、音楽を楽しむ優雅な生活を送ってみたいという夢もあります。今、毎日がドタバタと慌ただしく過ぎていくので、いつか夫婦でのんびりと旅行に行ったりもしたいですね。そのためにも、サムスカで透析をできる限り先に延ばしたい。“何とかなる”の精神で、ADPKDともサムスカともじっくり付き合っていこうと思っています。

記者の感想

お子さんを最優先してサムスカ服用のタイミングを決めたというFさん。その強さや優しさを支えているのが、ご主人の存在であるとも教えてくれました。お子さんの成長を心から楽しみにしていると語る明るい笑顔に、素敵な家族の姿が見えました。

2017年1月作成
SS1712897